第29回 能楽若手研究会大阪公演 「若手能」
2020年1月18日(土) 午後1時開演(開場正午) 於 大槻能楽堂
演目
◆ 能「敦盛」(あつもり)
前シテ(草刈りの男)・後シテ(敦盛の霊)/今村 嘉太郎
ツレ(草刈りの男)/井内 政徳
ツレ(草刈りの男)/上田 宜照
ツレ(草刈りの男)/寺澤 拓海
ワキ(蓮生法師)/喜多 雅人
間狂言(須磨浦の男)/善竹 隆司
笛/貞光 智宣
小鼓/成田 奏
大鼓/森山 泰幸
地謡/寺澤 幸祐 水田 雄晤 今村 哲朗 上野 朝彦
上野 雄介 笠田 祐樹 上田 顕崇 山本 麗晃
後見/大西 智久 齊藤 信輔
敦盛
源氏の武将 熊谷次郎直実は一の谷の合戦で年端も行かない平敦盛を討ち取ったのですが、あまりの痛ましさに無常を感じ、出家
して蓮生と名乗りました。敦盛の菩提を弔うために一の谷を訪れた蓮生(ワキ)が回想にふけっていると笛の音が聴こえ草刈男(前シテ
ツレ)たちが現れます。蓮生が話しかけると中のひとりが笛にまつわる話をします。
蓮生が不審に思うと、男は「自分は敦盛に縁のある者で、十念を授けて欲しい」と話します。蓮生が経をあげると、男は敦盛の化身で
あることをほのめかして姿を消しました。
その晩、蓮生が菩提を弔っていると敦盛の霊(後シテ)が往時の姿で現れ敦盛は自分を弔う蓮生を以前は敵でも今は真の友である
と喜び、懺悔の物語を始めます。寿永二年の秋の都落ち、須磨の浦での侘び住まい、平家一門の衰勢を語り、最期を迎える前夜の
陣内での酒宴のさまを想起して舞を舞います。そして、一の谷で舟に乗ろうと波打際まで進んだところで熊谷次郎直実に呼び止められて
一騎打ちとなり、討たれた戦いの場面を見せ、蓮生に回向を頼んで去っていきます。
文・今村 嘉太郎
◆ 狂言「地蔵舞」(じぞうまい)
シテ(旅僧)/善竹 忠亮
アド(宿主)/善竹 隆平
後見/小西 玲央
地蔵舞
僧(シテ)が旅の途中、日が暮れたので宿を取ろうとしますが、主人(アド)に当地の大法を理由に断られます。一計を案じた僧は
笠を一晩預かって貰う約束を取付け、後にその笠の下に這い込みます。見咎める主人に「笠に宿を借りた」と理屈を言うと主人は面白い
出家だと思い、大法を破って宿を貸すことにします。深夜、主人が酒を持って見舞いに来ると、僧は飲酒戒を保つと言って一旦は断り
ますが「飲んではいけないが、吸うならば構わないだろう」と言って酒盛りになります。僧は肴(余興)を乞われるままに地蔵舞を舞って
出立します。
大騒ぎになりがちな他曲の酒盛りと異なり、深夜、近隣に気付かれないよう静かな盛り上がりを見せるところが本曲の趣向であり、
また演者にとっては難所でもあります。
文・善竹 忠亮
◆ 能「殺生石」(せっしょうせき)
前シテ(里の女)・後シテ(野干の精)/山田 薫
ワキ(玄翁和尚)/矢野 昌平
間狂言(能力)/上吉川 徹
笛/赤井 要佑
小鼓/久田 陽春子
大鼓/山本 寿弥
太鼓/中田 一葉
地謡/大西 礼久 齊藤 信輔 水田 雄晤 今村 哲朗
井内 政徳 上田 宜照 笠田 祐樹 寺澤 拓海
殺生石
高僧玄翁(ワキ)が下野国那須野の原を通りかかると、上空で飛んでいた鳥が落ちてしまうのを目撃します。そこに一人の女(前シテ)が
現れ「その石は殺生石と呼ばれ、近付く者の命を奪う」と玄翁に忠告します。女はその石がかつて鳥羽院に取り入り世を悩ませた玉藻前
が変じたものであることを教え、由来を詳しく語ります。やがて実は自分こそがその玉藻前の執心であると告白し、石の陰に姿を消します。
玄翁が石の前で法事を執り行うと石は真っ二つに割れ、中から玉藻前の正体である野干(狐)の精(後シテ)が現れます。野干は
「かつて天竺、唐、そして日本をまたにかけ世を悩ませていたが、陰陽師安倍泰成に正体を見破られ、この那須野の原で三浦介、
上総介によって退治された」と自身の最期を語ります。やがて玄翁の弔いによって二度と悪事を働かないことを約束し姿を消します。
有名な大妖怪『九尾の狐』の伝説を題材にした作品です。舞台中央には殺生石を模した巨大な作り物が据えられ、とてつもない存在
感があります。後半クライマックスではシテが自身の退治される有り様をアクション満載で再現します。
文・山田 薫